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何らかの事情によって離婚をすることになったとしたら、親権、養育権、慰謝料など様々な事柄を取り決めておかねばなりません。なぜなら、取り決めをしておかないと、将来的にトラブルに発展する可能性があるからです。
こうした取り決め事項の1つに「住宅・住宅ローンの取り扱い」があるでしょう。持ち家の場合もあるでしょうが、特に離婚時に家のローンがどうなっているかによって、事態は複雑になります。ここでは離婚後に住宅と住宅ローンをどうしたら良いかについて詳しく見ていきます。
■離婚後の住宅・住宅ローンに関する確認の必要性
離婚後に住宅や住宅ローンをどのように扱うかを決めるには、まず現状は「住宅・住宅ローンがどうなっているか?」の確認をする必要があります。そこで、「住宅に関すること」と「住宅ローンに関すること」それぞれの、事前に調査・確認しておくべき事柄を説明します。
不動産の名義と価格を確認する
まず住宅等の不動産に関する事項を確認します。この確認事項は下記の2つです。
- 名義人が誰になっているか?
- 不動産価格はいくらか?
まず名義人について見ていきます。不動産は、その所有者情報が法務局にて登記されています。多くは「夫のみ」、または「妻のみ」、「夫と妻」のいずれかです。離婚後に誰の財産かハッキリさせるためにも、あらかじめ現状の所有者を確認しておく必要があります。
また、不動産価格についても見ておく必要があります。離婚後に「その住宅に住み続けるか」、それとも「住宅を売却するか」は不動産価格によるところが大きいです。不動産鑑定士に依頼して、不動産評価額を査定してもらう必要もあります。
住宅ローンの契約内容・残額を確認する
続いて「住宅ローン」に関する事柄を確認しましょう。こちらも確認事項が以下の通り2つあります。
- 契約内容はどうなっているか?
- 住宅ローン残高はいくらか?
まず契約内容についてです。住宅ローンの契約内容で特に気をつけたいのが、「誰が債務を負っているか?」です。よく見られるパターンは「夫が主債務者・妻が連帯保証人」、「夫が主債務者・保証協会の利用」などです。離婚後に誰が債務を負うのかトラブルになりやすいため、契約内容を確認しておきましょう。
また、住宅ローン残高も確認が必要です。住宅ローン残高も、離婚後に「住宅に住み続けるか」、「住宅を売却するか」を決める重要な要素です。不動産評価額と併せて、一緒に住宅ローン残高も確認しておくようにしましょう。
■離婚における「アンダーローン」と「オーバーローン」による違い
離婚後に住宅をどのように扱うかは、不動産評価額と住宅ローン残高が大きく影響を与えます。かりに「不動産評価額 > 住宅ローン」であればアンダーローンとして検討をしていきます。
一方、「不動産評価額 < 住宅ローン」であれば、オーバーローンとして検討をしていかねばなりません。そこでそれぞれの場合の検討ポイントを説明していきます。
アンダーローンの場合
アンダーローン(不動産評価額が住宅ローンを上回っている状態)の場合、一番簡単な手続き方法が「不動産を売却し、返済に充てる」ことです。その上で、利益分を夫婦間で分割すれば手続きを最小限に抑えられます。
しかし、アンダーローンで「不動産を売却しない」場合は、ローンの負担や住宅を受け取らない配偶者の財産分与などを検討しなければなりません。不動産を売却しない場合は特に、離婚問題を専門とする弁護士にしっかりと相談をする必要があります。
オーバーローンの場合
オーバーローン(不動産評価額が住宅ローンを下回っている状態)の場合、一般的には「不動産を売却せず、一方が住み続ける」ケースが多いです。この場合、離婚後も住み続ける夫(もしくは妻)が、住宅ローンを負担することが一般的です。
しかし、オーバーローンで「不動産を売却する」場合もあるでしょう。こちらは不動産の売却後も住宅ローンが残るため、誰が負担をするのか取りきめておく必要があります。
いずれにしろ、オーバーローンの場合は誰かが住宅ローンを負担しなければなりません。離婚後にトラブルを起こさないためにも、厳密に取り決めておく必要があります。
■離婚後の住宅・住宅ローンの取り扱い
アンダーローンであれば売却すれば手続きが比較的簡単に済みますが、オーバーローン場合はそう簡単にはいきません。
離婚後の住宅の扱いは「住み続けるか」、それとも「売却をするか」のいずれかを選択する必要があります。また、住宅ローンの扱いは「夫婦のどちらが負担するか」だけです。こちらの組み合わせを見ると、下記の4つのパターンになります。
- A:主債務者(主に夫)が住み、支払い続ける
- B:連帯債務者(主に妻)が住み、支払い続ける
- C:売却後に主債務者(主に夫)が支払い続ける
- D:売却後に連帯債務者(主に妻)が支払い続ける
そこでそれぞれの注意点について見ていくこととします。
A: 主債務者(主に夫)が住み、支払い続ける
主たる債務者(主に夫)が住宅に住み続け、そのまま住宅ローンを支払い続ける(オーバーローン)場合は、それほど問題は複雑ではありません。
しかし、アンダーローンの場合は、本来であれば利益分が出ているため、原則としてその利益の半分を配偶者に財産分与することが決まりです。そのため、財産分与の際に考慮する必要があります。
なお、配偶者が連帯債務者になっている場合は、住宅ローンから連帯債務を抜ける手続きが別途必要になります。金融機関の了承なしに連帯債務契約の解除はできないので、相談をするようにしましょう。
B: 連帯債務者(主に妻)が住み、支払い続ける
連帯債務者(主に妻)が住宅に住み続ける場合、住宅ローンの支払いを「誰がするか」がポイントになります。考えられるパターンは下記の2つです。
- B-1: 主債務者(主に夫)が住宅ローンを支払う
- B-2: 連帯債務者(主に妻)が住宅ローンを支払う
まず「主たる債務者が支払う」場合です。この場合、離婚時の決定事項で住宅ローンの支払いを夫がする取り決めをします。しかし、契約上は支払う旨が取り決められていても、実際は滞納や未払いが起きるケースもあり得ます。そのため、連帯債務者は不安定な状況に追いやられる可能性があることを認識しておくべきです。
また「連帯債務者が支払う」場合です。この場合のポイントは、連帯債務者に住宅ローンの「返済能力を有するか」という点です。なぜなら、住宅ローンの契約者を変更する手続きには「返済能力の有無」が関係するからです。この点を回避するために、債務者を夫のままにして、実際の支払いを妻がする方法があります。
なお、妻が住み続ける場合は、最終的に「名義変更」を行う必要があります。離婚時に住宅ローンの支払完了後に、名義変更を行えるようにしておくなどの契約をしておきましょう。これによって登記のトラブルを解消出来るようになります。
C: 売却後に主債務者(主に夫)が支払い続ける
不動産を売却後に住宅ローンが残っており、主たる債務者(主に夫)が支払い続ける場合も、基本的には複雑な問題はありません。
ただし、財産分与の際に、この住宅ローンの残高の負担を考慮する必要があるかもしれません。また、配偶者が連帯債務者を抜ける場合には、別途、連帯債務者を立てる必要があるので、金融機関の承認を受ける必要があります。
D: 売却後に連帯債務者(主に妻)が支払い続ける
不動産を売却しても住宅ローンが残っている場合で、その債務を連帯債務者(主に妻)が支払う場合は手続きが困難です。住宅ローンの契約変更ができるなら問題ありませんが、必ずしも金融機関が承諾するとは限りません。
そこで万が一、連帯債務者も支払いを続ける場合は、一度夫を通して返済をする方が良いでしょう。また共同で支払いを続ける場合も同様です。
ただし、この支払いを負わない代わりに、養育費などを受け取らない方法も考えられます。離婚問題に強みを持った弁護士に相談をするのが良いでしょう。
■まとめ:離婚でもめやすい住宅ローン問題は弁護士とご相談を
離婚時の住宅と住宅ローンの扱いについて見ていきましたがいかがでしょうか。
離婚時の検討事項として、「不動産の所有者と価格」「住宅ローンの契約内容と残額」がポイントになることを説明しました。住宅を検討する際には、この2つのポイントを考慮して取り決めるといいでしょう。
しかし、いずれの場合も離婚というストレスの非常にかかる状況下で話し合いをして取り決めるのは骨の折れることすし、上記に見てきたように調べることが多く、また手続きも煩雑になりますので、離婚に強い弁護士にご相談されることが一番の近道となります。
埼玉県越谷市にある当エクレシア法律事務所は、離婚時の住宅・住宅ローンに関するトラブルに解決にも実績のある法律事務所です。
越谷市だけでなく越谷市近辺の埼玉県春日部市、川口市、吉川市、草加市、三郷市、八潮市、松伏町、東京都足立区、千葉県流山市、松戸市など、多くの方からもご相談を受け付けております。
離婚後に住む家のことですから、生活に直接関わってくる問題ですので、当事務所の弁護士が親身にご相談に応じます。
まずはお電話・メールにてご相談ください。詳しくは、相談の流れをご参照ください。
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