目次
■序:協議離婚から離婚調停に移った場合に知っておくべきことは?
夫婦が離婚をする場合には、当事者どうしで話し合いをして協議離婚をすることが多いですが、話し合いがつかない場合には、調停離婚をする必要があります。
調停離婚をすすめる場合、どのような方法で手続きが進んでいくのでしょうか?相手と顔を合わせないで手続きをすることができるのかなどが問題です。また、相手に住所を知られたくない場合の対処方法や、離婚調停にかかる期間や費用、調停離婚のメリットなども知っておきたいところです。
今回は、調停離婚の手続きについて、わかりやすく解説します。
■1.協議離婚で解決できない場合の調停離婚
調停離婚とは、家庭裁判所での「夫婦関係調整調停手続き」を利用して離婚する手続きのことです。調停離婚をすると、戸籍謄本にも「調停離婚」であることが明記されます。
夫婦が離婚をする場合には、夫婦が話し合いをして離婚条件を決めて協議離婚するケースが多いですが、離婚条件に折り合いがつかず、自分たちでは解決ができないことがあります。また、相手方が話し合いに応じてくれないこともあります。このような場合、離婚手続きを先に進めるためには家庭裁判所の夫婦関係調整調停(離婚調停)を利用する必要があります。
夫婦関係調整調停では、家庭裁判所の調停委員が間に入ってくれて話し合いをすすめてくれるので、夫婦が自分たちでは決められない場合でも、離婚条件に折り合いがついて解決できることがあります。離婚の話し合いに応じてくれなかった相手方でも、家庭裁判所から調停の呼出状が届けば裁判所に出頭してきて、離婚の話し合いができることも多いです。
このように、離婚調停は、協議離婚では解決できない離婚問題を解決するために非常に有用な手続きです。
夫婦関係調整調停で話し合いが成立すると、合意した内容を記載した調停調書が作成されます。これを役所に持っていって届出をすると、離婚手続きができます。
ただし、夫婦調整調停で話し合いをしても、合意ができないことがあります。
調停では、当事者に結論を押しつけることができないので、当事者が納得しない限りは調停が成立しないのです。
この場合には、夫婦関係調整調停は不成立となって、離婚をすすめるためには離婚訴訟を起こす必要があります。
■2.調停前置主義とは
協議離婚で離婚問題を解決できない場合、調停手続きをしないで直接離婚訴訟をしたいと考える場合があります。
たとえば、親権についての対立などが激しく、調停をしても合意ができないことが目に見えている場合などには、調停をするだけ無駄なのですぐにでも訴訟をしたいと考えることが多いです。
しかし、法律上、調停をせずにいきなり離婚訴訟をすることはできません。離婚訴訟を起こすためには、必ず夫婦関係調整調停を起こして、それが不成立になっている必要があります。
このことを、「調停前置主義」と言います。離婚訴訟には、必ず離婚調停を前置しないといけないので調停前置主義です。
夫婦間の対立がどれほど激しい場合でも、夫婦関係調整調停は必要です。
相手方と一刻も早く離婚をしたいのですぐにでも離婚訴訟を起こしたい場合でも、必ず離婚調停でワンクッション置かないと手続きできないので注意が必要です。
■3.家事事件手続法とは
夫婦関係調整調停(離婚調停)は、家事事件手続法という法律にもとづいた制度です。家事事件手続法は、平成25年(2013年)に施行された比較的新しい法律ですので、以下でその概要を説明します。
家事事件手続法は、夫婦間の紛争や成年後見などの家事事件の手続を定める法律で、家事調停手続と家事審判手続について定めています。
家事調停では、裁判官1人と調停委員2人以上で構成する調停委員会が、申立人と相手方の双方から主張を聞いて、調整をしながら話合いをすすめます。
家事調停については、平成25年までの間、家事審判法という法律で規定されていました。家事審判法は昭和22年に制定された古い法律で、現代的な需要にも対応していなかったので、平成23年に新たに家事事件手続法が制定され、平成25年1月1日から交付されたのです。
家事事件手続法では、原則として調停申立書の写しを相手方に送付することにしたり、子どもがかかわる事件では子どもの意見を聞くようにしたり、遠方の当事者の事件ではテレビ電話システムを導入したりしています。
このように、家事事件手続法では、家事審判法と比べて当事者の手続保障を充実させたり、調停の手続をより利用しやすいものにしたりする工夫をしています。
■4.夫婦関係調整調停(離婚調停)の申立方法
調停離婚をするための夫婦関係調整調停の手続を利用する場合には、調停の申立をする必要があります。
夫婦関係調整調停を申し立てるためには、調停申立書を記載する必要があります。調停申立書には、相手方と離婚したいこと、子どもの親権、養育費、財産分与、慰謝料などの離婚条件についての希望を記載します。そして、離婚したい理由なども具体的に記載します。
調停申立書の用紙は、家庭裁判所に置いてあるので、各地の家庭裁判所に行けば用紙をもらうことができますし、裁判所のホームページでも記載例などがダウンロード、閲覧できますので便利です。
家庭裁判所に行くと、家事手続の利用方法などについてアドバイスしてもらえる家事相談を受けることもできます。家事相談は、家事手続の利用方法についての説明を受ける手続であって、法律相談ではないので注意しましょう。
調停申立書を記載し終えたら、それを家庭裁判所に提出すると夫婦関係調整調停の申立ができます。申立の際には、夫婦の戸籍謄本が必要になります(戸籍抄本ではありません)。また、収入印紙1200円程度及び数千円の郵便切手も必要です。収入印紙と郵便切手については、近くの郵便局で購入すると良いでしょう。
調停申立書を提出する際、話し合いの際に参考になりそうな資料があれば、証拠としてコピーを提出しておくと良いでしょう。そうすると、事前に調停委員がその証拠を参照してくれるので、話し合いをスムーズにすすめやすくなります。
調停申立書を提出して夫婦関係調整調停の申立が済むと、しばらくして裁判所から「調停期日の呼出状」が届きます。
呼出状には、第一回調停の日時が記載されています。指定された日時に裁判所に行くと、調停が開催されます。
■5.夫婦関係調整調停(離婚調停)の進み方
夫婦関係調整調停を申し立てたら、具体的にどのように調停期日が進められるのかを説明します。
離婚調停を行う場合、当事者は裁判所内に用意された別々の待合室で待機しています。そして、調停委員2名が別の部屋で待っています。
そして、夫婦は順番に調停委員のいる部屋に順番に呼び出されて、話をすることになります。
夫婦が双方同時に呼出を受けることはほとんどなく、あるとしても事前に夫婦の了承をとります。
よって、離婚調停で話を進める際、基本的に夫婦が顔を合わせることはありません。
相手の言っていることは、調停委員を介して伝えられることになります。
このように、調停委員を介して話し合いをすすめる方法で、離婚条件について1つ1つ決定していくのが離婚調停の手続です。
■6.調停離婚のメリット
調停離婚には、協議離婚にはないいくつかのメリットがありますので、以下でご紹介します。
6-1.お互いに冷静に話をすすめられて合意しやすい
まず、調停離婚をする場合には、話し合いの間に調停委員が入ってくれるので、お互いが冷静になって話し合いをすすめやすいです。
夫婦が直接話し合いをしていると、どうしても感情的になって合意できないことが多いですが、離婚調停を利用すると、夫婦が直接顔を合わせず間に調停委員という第三者が入ってくれますし、調停委員から法律的な説明を受けたり、説得されたりもします。このことで、当時者は、主張をして通ることと通らないことについて判断ができるようになり、合意しやすくなります。
6-2.相手と顔を合わさず話し合いができる
調停離婚をする場合、相手と顔を合わさないで話し合いができるというメリットもあります。
離婚事件では、特にDV事案などの場合には、相手方と顔を合わせずに手続をすすめる必要性が高いです。
相手と直接顔を合わせると、お互いが非常に不快な気持ちになりますし、ときにはトラブルになるおそれもあります。
このような場合、離婚調停を利用すると相手方と顔を合わせずに手続をすすめることができます。
6-3.DV事案など特殊事案では相手と会わないための配慮がある
離婚調停では、原則的には調停委員が1つの部屋に待機していて、当事者が入れ替わりでその部屋に呼び出されて話をする方法をとりますが、DV事案では、さらに当事者が顔を合わせるリスクを減らすように配慮をしてくれます。
具体的には、DV事案などの場合、当事者がそれぞれ別の部屋で待機していて、調停委員がその部屋を行き来する方法がとられます。このことによって、当事者が部屋の移動中に裁判所の廊下や階段などの場所で顔を合わせる可能性もなくなります。さらに、呼出の時間や帰りの時間をずらしてもらうことによって、裁判所の玄関や外などで待ち伏せされたり遭遇したりするリスクも減らしてもらう配慮があります。
6-4.プライバシーを守れる
離婚調停は、非公開の手続です。このことによって、夫婦は周囲に知られたくないプライバシーを守ることができます。
通常、離婚問題はプライベートな問題なので、外部に知られたくない事がたくさんあります。
ここで、離婚調停は完全に非公開なので、第三者が手続を見学することはできません。代理人弁護士以外の人は、たとえ親族であっても調停に同席することが認められません。
また、特に話し合いの経過を詳しく記載した記録書類が作成されることもありませんし、録音がとられることもありません。よって、調停で話した内容が裁判所の外部に漏れて他人に知られるおそれはありません。
これに対して、離婚訴訟は公開手続なので、たとえば尋問期日に第三者が見学に来る可能性もありますし、訴訟記録もきちんと作られてしまいます。
一方、離婚調停の場合、調停委員や裁判官にも守秘義務がありますので、これらの人の口から離婚事件の内容が外に漏れるおそれもありません。
このように、調停離婚をすると、プライバシーを守って離婚出来ることが大きなメリットになります。
■7.調停期日の変更はできる?
夫婦関係調整調停(離婚調停)の申立をしたり、相手方となって呼出を受けたりした場合、定められた調停期日に都合がつかないケースがあります。このような場合、調停記事を変更出来るのかが問題になります。
調停期日は、変更できることもありますが、できないことが多いです。その調停期日が、その当事者が欠席したら全く手続をすすめられなくなる日である場合には、期日の変更が行われます。そうでない場合には、一方当事者が欠席した状態で、他方当事者だけから意見を聞くための期日を開きます。
どちらにしても、調停に欠席するときには、必ず裁判所に事前に連絡を入れる必要があります。当事者から欠席の連絡を受けたら、裁判所が状況に応じて調停期日を維持するのか変更するのかを決めるからです。
調停に弁護士など代理人が就いている場合には、比較的柔軟に調停期日を変更しやすいです。弁護士が就いていれば、弁護士を通じて比較的スムーズに調停期日が変更出来るからです。
当事者が自分で手続きしている場合には、調停期日を変更するとなると、他方当事者に対して電話や郵便で期日の変更を伝える必要が発生しますし、そうなると今度は期日の変更通知を受けた相手当事者が不満を持ったり、新しい期日に来なくなったりする問題が発生しがちです。
このような問題があるので、調停に代理人が就いていないケースでは調停期日の変更が認められにくいのです。
■8.調停に無断欠席したらどうなる?
調停期日に欠席する際には、事前に必ず家庭裁判所に連絡を入れる必要があります。連絡を受けたら、期日の変更が認められることもありますし、認められないとしても、その次の期日は当事者双方の都合の良い日にちを設定してもらうことができます。
さらに調停期日の当日は、一方当事者が欠席する前提でどのようなスケジュールにするかを事前に裁判所が協議して、他方当事者から意見を聞くための準備を整えて、スムーズに期日進行ができます。
もし事前に当事者から欠席するという連絡が無かったら、裁判所や相手当事者は、数十分程度欠席した当事者が出頭してくるのを待たなければなりませんし、当然無断欠席した当事者への印象も悪くなります。待っている間、裁判所が無断欠席した当事者に電話連絡をして状況を確認することもよくありますが、その際にようやく出頭できないことがわかったり、電話をしてもつながらなかったりすると、さらに印象が悪くなります。
印象が悪くなると、調停委員からの風当たりも悪くなりますし、自分に有利な話し合いをすすめることは難しくなります。
結局、無断欠席をすると、自分に不利に働いてしまうのです。
欠席をするとしても、きちんと事前に連絡を入れて常識的な対応をしていれば、特に不利益になることはありません。
■9.調停調書の作成と効力
夫婦関係調整調停(離婚調停)が成立したら、調停調書が作成されます。調停調書には、いくつかの効力があります。
まず、調停調書は、離婚を成立させる効力があります。これを市町村役場に持っていったら、相手方の署名押印がなくても離婚届けができます。調停成立後は、一方当事者だけの手によって離婚手続ができます。
ただし、調停調書を提出して離婚届けをするためには、期限があります。具体的には、調停成立後10日以内に離婚届をしなければなりません。
10日を超えてしまうと、科料(罰金のような罰則)の制裁を科されてしまい、お金を支払わなければならなくなるおそれもあります。
よって、調停が成立して自宅宛に離婚の調停調書が届いたら、すぐに役所に持参して離婚届をしましょう。
また、調停調書内に記載してある事項も法的に有効となります。たとえば親権者の記載があれば、当然子どもの親権者は調停調書に記載のある当事者に認められます。
調停調書には、強制執行力(差し押さえをする効力)がありますので、慰謝料や財産分与、養育費などの金銭支払いの条項があれば、その支払いがなされない場合、調停調書をもって相手方の財産を差し押さえることができます。この場合には、預貯金や生命保険、不動産や給料など、相手方名義のあらゆる種類の財産を対象にして取り立てることができます。
このことは、支払をする側からすると、調停調書が作成された場合に不払いを起こすと、いつなんどき差し押さえを受けるかわからないということになります。給料差し押さえが起こると、会社にも裁判所から通知が来て差し押さえが起こったことがばれてしまいます。
離婚調停で決まった支払については、必ずきちんと支払うことが重要です。
■10.相手と顔を合わせたくない場合の手続方法
離婚調停では、DV事案などで、相手方と絶対に顔を合わせたくないケースがあります。このようなケースでは、上記で説明した様に、特殊事案として相手方と顔を合わせないように別室調停の手続がとられたり呼出の時間を変えたりするなどの配慮を受けられます。しかし、裁判所に何の連絡もしなければ、このような配慮は受けられません。
相手方と顔を合わせると困ったことになる特殊なケースでは、裁判所への調停申立時において、裁判所に対してそのことを申告して、相手方と絶対に顔を合わせないように配慮が必要であることを伝える必要があります。別室調停にしてください、とか、時間をずらして呼出しを行い、終わるときにはこちらを早めに帰してください、とはっきり言ってもかまいません。
心配がある場合には、弁護士に代理人を依頼するとこのような手続をすべて適切に行ってくれますし、万が一相手と顔を合わせてしまった場合でも弁護士がいることで相手も遠慮したり、弁護士が守ってくれたりするので安心です。
■11.相手に住所を知られたくない場合の手続方法
離婚調停を行う場合、原則としては、最終的に相手方に住所を知られることになってしまいます。調停調書には、当事者の住所が記載されるからです。
しかし、DV事案などでは、相手方に現在の住所や居所を知られると困るケースがあります。
このような場合には、調停調書上に現在の住所ではなく住民票上の住所を載せるなどの方法で、相手方に住所を知らせない手続ができます。
ただし、この場合も何も裁判所に申告をしないと、原則としては現在の居所や住所が載せられてしまいます。
現在の居所や住所を秘匿したい場合には、その旨を記載した住所に関する上申書を裁判所に提出する必要があります。
住所に関する上申書を裁判所に提出したい場合には、裁判所に対して「相手方に住所を知られたくないので、そのための手続をしたい」と申し出ると手続ができます。上申書自体は裁判所に用紙があり、とても簡単な内容なので誰でも作成出来ます。
また、相手方に住所を秘匿したい場合でも、弁護士に代理人を依頼しているとスムーズに手続ができます。
弁護士であれば、住所を秘匿すべき離婚事案の取り扱いにも慣れていますし、どのような事案でどのように対処すれば適切に住所を知られずに手続をすすめられるかをよく知っています。
当事者が自分で対応していると、裁判所にうまく住所秘匿の希望を伝えることができずに住所が調停調書に記載されてしまうおそれもあります。
このようなことがあるので、DV事案など相手と顔を合わせたくない事案や住所を秘匿したいような事案では、離婚調停手続を弁護士に依頼する方が安心ですしメリットがあります。
■まとめ
今回は、調停離婚の手続全般について解説しました。夫婦が話し合って協議離婚手続ができない場合には、家庭裁判所の離婚調停(夫婦関係調整調停)手続を利用して調停離婚する必要があります。離婚調停では、家庭裁判所の調停委員2名が間に入ってくれて話し合いをすすめられるので、お互いが冷静になって話をしやすいですし、相手と顔を合わせずに済んだり、プライバシーも守れたりするメリットがあります。
DV事案などのケースでも、離婚調停をすると相手と顔を合わせないまま離婚ができるのでメリットがありますが、その場合、裁判所で相手とトラブルにならないようにいろいろな配慮が必要になります。
離婚調停は、弁護士に依頼すると手続がスムーズにすすみやすく、自分の有利に話し合いをすすめてもらえるので、メリットが大きいです。
今回の記事を参考にして、上手に離婚調停を利用しましょう。
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