2015年12月16日に最高裁判決にて、再婚禁止期間6カ月のうち、100日を超える部分が「違憲」であると下されました。これによって2016年5月24日に衆議院で、同年6月1日に参議院にて民法改正案が可決・成立されました。
ここでは再婚禁止期間の改正内容と、改正による注意点を中心に解説していきます。離婚後再婚を検討している方は、特に注目して確認してください。
■再婚禁止期間とは?
再婚禁止期間とは、原則として「女性は、離婚後6カ月間は再婚できない」規定のことです。これは民法733条1項に記された条文であり、女性にのみ規定された制限でした。
再婚禁止期間が定められていた理由は、「生まれてくる子供の父親を明確にする」ためです。これは民法772条に規定されており、「離婚成立後300日以内は前夫の子」、「再婚成立後200日後は現夫の子」としていました。したがって、再婚禁止期間を設けることで、前夫か現夫の子供かを明らかにしやすくなります。
なお、再婚禁止期間はあくまで「生まれてくる子供の父親を明確にする」ことが目的です。つまり、前夫が3年以上行方不明などの理由によって離婚する場合には、前夫の子供が生まれないので、禁止期間は適用されません。
■「再婚禁止期間」改正までの流れ
2016年6月1日に再婚禁止期間の民法改正案が参議院で可決されました。これによって事実上、再婚禁止期間の短縮が成立したことになります。そこでこの可決・成立までの流れを見ていきます。
2011年に一審・岡山地方裁判所で「棄却」
2011年に岡山県在住の30代女性が、「再婚禁止期間6カ月」の規定が「法の下の平等を定めた憲法に反する」として一審・岡山地方裁判所に提訴しました。しかし、岡山地方裁判所は「立法の趣旨には合理性がある」として、この提訴を棄却しました。
二審・広島高裁岡山支部判決も「棄却」
岡山地方裁判所の判決に不服のあった女性(原告)は、続いて広島高裁岡山支部に控訴しました。しかし、高等裁判所も「一審の判決を支持」して、控訴を棄却しています。
2015年に最高裁判決にて「違憲判決」を下す
広島高等裁判所の判決にも不服のあった女性(原告)は、最後に最高裁判所に上告しました。そして最高裁判決にて、「再婚禁止期間の100日を超える部分は違憲である」との判決を下しました。これによって立法で民法改正案の取り決めを行うことになります。
なお、原告は国に対して165万円の損害賠償を求めていました。しかし、最高裁は賠償請求については退けています。
2016年3月8日に民法改正案を閣議決定
2015年12月の最高裁違憲判決を受け、2016年3月8日には、「再婚禁止期間の短縮等に関する民法の一部を改正する法律案」の閣議決定をしました。
なお、改正点は次項で詳しく解説をします。
2016年5月24日に衆議院で可決
2016年5月24日の衆議院本会議にて、民法改正案が賛成過多で可決されました。
2016年6月1日に参議院で可決・成立
2016年6月1日の参議院本会議でも、民法改正案が賛成過多で可決されました。これによって改正案が成立し、近日中に公布・施行されることになります。
なお、付則では3年を目途に「再婚禁止期間」について再検討することとしています。
2016年6月7日に公布・施行
2016年6月1日に民法改正案が可決・成立した旨を受け、2016年6月7日に公布・施行されました。これによって「再婚禁止期間が100日に短縮」「再婚禁止期間でも要件を満たせば再婚可能」になります。
■「再婚禁止期間」の民法改正の内容とは?
今回の民法改正では大きく2つポイントが変わりました。そこで、改正内容について具体的に解説していきます。
再婚禁止期間が「100日」に短縮された
改正前の再婚禁止期間の規定によれば、「6カ月(180日)」は再婚が禁止されていました。しかし、今回の改正により再婚禁止期間が「100日」に短縮されることになりました。
これによって、女性の結婚の自由が保障されることになります。また、離婚成立後300日以内は前夫の子、それ以降は現夫の子として推定されるように変わります。
再婚禁止期間の適用除外要件を改正した
改正前の再婚禁止期間の適用除外要件には、「離婚前から妊娠していた場合、出産後は再婚できる」としていました。これは民法733条2項にて規定されていた内容です。
この除外要件も「離婚時に妊娠していない」、「離婚後に出産した」の2つに改正しました。つまり、再婚禁止期間100日以内でも、妊娠していない事実が証明できれば再婚可能となったのです。
■「再婚禁止期間」改正による離婚上の注意点とは?
再婚禁止期間の改正によって女性の結婚の自由が保障されやすくなりました。しかし、改正による注意点も少なからず残っています。ここでは再婚禁止期間改正による注意点について解説します。
取扱いは2016年6月7日以降に婚姻の届出がされたもの
再婚禁止期間の短縮改正は、2016年6月7日から施行されました。なお、この改正が適用される取扱いは、2016年6月7日以降で、「前婚の解消又は取消しの日」から起算して100日を経過していない女性を当事者とする婚姻の届出が出されたものに限られます。
したがって、6月6日以前に届出が出されたものには適用されないので注意が必要です。
ここで、「前婚の解消又は取消しの日」は、離婚の届出日等、法的に前婚の解消又は取消しの効力が生じた日、つまり協議離婚なら協議離婚の届出日、調停離婚なら調停成立日、裁判離婚なら離婚の裁判確定日を指しています。
再婚禁止期間の再婚には医師の証明書が必要
民法733条第2項では、再婚禁止期間100日以内でも再婚可能要件を規定しています。ただし、再婚するためには「医師が診断した証明書」が必要になります。
証明書を作成してもらうには、医師に診断を受ける際に「離婚日」を申告する必要があります。もし誤った日にちを申告して作成した場合には、再婚が認められないこともあるため注意が必要です。
離婚後100日間は再婚禁止が「合憲」とされた
「再婚禁止期間100日間に短縮」と言うことは、逆説的な考えをすると、「離婚後100日間の再婚禁止は合憲」として判断されたと見て取れます。女性の結婚の制限が大幅に解消されたとはいえ、まだ完全に自由を保障された訳ではありません。「再婚禁止期間100日間」が法の下に平等なのか、検討をしていく必要がありそうです。離婚後再婚までの期間は今後も議論になる可能性があるかもしれません。
■まとめ: 離婚後すぐ再婚する方は弁護士相談も検討を
今回は再婚禁止期間の民法改正について見てきましたがいかがでしょうか。民法成立以降、一度も改正をしてこなかった「再婚禁止期間」が2016年に改正されました。これによって今後、日本の家族制度が大きく変わるかもしれません。これから離婚・再婚を考えている人は、新しくなった再婚禁止期間に従って再婚をすることになります。離婚後再婚を検討されている方は法的な問題を確実にクリアする必要もありますし、トラブルにもなりやすい事案ですので、離婚に強い弁護士に相談されることをおすすめします。
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