年金分割制度とは
年金分割制度は、離婚後に片方配偶者の年金保険料の納付実績の一部を分割し、それをもう片方の配偶者が受け取れるという制度です。
日本の年金制度は、以下のように3階建ての構造になっています。
- ①(1階部分) 国民すべてに加入義務のある国民年金
- ②(2階部分) 厚生年金・共済年金
- ③(3階部分) ①②を補完する厚生年金基金等
年金分割制度は「厚生年金保険および共済年金の部分」(2階部分)に限って「婚姻期間中の保険料納付実績」を分割する制度です。国民の基礎年金である「国民年金」(1階部分)に相当する部分や、「厚生年金基金・国民年金基金」等(3階部分)に相当する部分は分割の対象にはなりませんし、また、「婚姻前の期間」の分は反映されません。
尚、年金受給を受ける本人が、原則として、保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間の合計が25年以上ない場合には、年金受給資格が発生しませんので、年金分割をしても年金が受け取れないことになります。
年金分割の種類
年金分割制度には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
「合意分割」とは、離婚当事者が、分割することと按分割合について合意していれば、離婚時に限り、婚姻期間の保険料納付実績を按分割合の限度を最大2分の1として分割できるという制度で、平成19年4月から始まりました。離婚当事者間の協議で按分割合について合意をして、社会保険事務所に厚生年金分割の請求を行うことになります。合意がまとまらない場合には、離婚当事者の一方の求めにより、裁判所が審判・裁判で按分割合を定めることができます。
「3号分割」とは、平成20年4月以降の第3号被保険者であった期間について、離婚した場合に、離婚当事者一方からの請求により、第2号被保険者の被保険者保険料納付実績を自動的に2分の1に分割できるというものです。合意分割と異なり、請求すれば当然に2分の1の割合で分割されます。
いずれも原則として離婚等をした日の翌日から起算して2年以内という期間制限があります。
年金分割の方法
合意分割の場合
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①夫婦間の合意による場合
夫婦間の話し合いによって合意分割を行うためには、当事者間で決定した按分割合を定めた書面を作成する必要があります。なぜなら、年金事務所に分割の請求をするにあたり、書面を一緒に提出する必要があるからです。請求できる期限は、離婚が成立した日の翌日から2年間です。
具体的には、合意の内容を定めた公正証書の謄本もしくは、抄録謄本または公証人の認証を受けた書面等が必要となります。夫婦間の協議によって合意ができない場合は、家庭裁判所における調停や審判・離婚訴訟における手続によって決定することになります。 -
②調停による場合
夫婦関係調整(離婚)調停に付随して、按分割合を定めることができます。離婚成立後も、按分割合を定める調停の申立をすることができます。請求は、①と同じです。
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③審判による場合
年金分割についての合意ができていない場合に申し立てることができます。按分割合を定める調停を申し立てたけれども、不成立で終了した場合には、審判手続に移行することになります。請求は①と同じです。
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④離婚訴訟における附帯処分の手続
離婚訴訟において、「附帯処分」というかたちで付随して年金分割の分割割合を決定するよう請求することができます。請求は①と同じです。
3号分割の場合
当事者間の合意は不要ですので、分割を受ける当事者は年金事務所での請求手続きを踏めば、年金分割を受けることができます。