よっぽどの理由がない限り、離婚前には別居する夫婦が多いようです。ただし、別居中であっても、法律上では夫婦であることに違いありません。したがって、相互扶助をする必要があります。
この相互扶助の方法として、「婚姻費用分担請求」があります。ここでは婚姻費用の説明から、実際の請求手続きの流れまでを説明していきます。別居や離婚を考えている人は、よく確認をしておきましょう。
目次
■婚姻費用と分担義務
婚姻費用分担請求の基本となる「婚姻費用」と「分担義務」について説明をします。
婚姻費用とは?
婚姻費用とは、別居中に夫婦とその子供が生活するために必要な生活費のことです。具体的には下記のような項目が当てはまります。
- 最低限の生活に必要な生活費、医療費
- 子供のための教育費、養育費
- 一般的に必要とされる交際費、娯楽費
上記の婚姻費用は、保有する財産や収入、社会的地位などを維持するために必要な費用として見られています。
婚姻費用の分担義務とは?
婚姻生活を営む夫婦は「互いに協力・扶助する」必要があります。これは民法760条に記載されている内容で、「婚姻費用の分担義務」と呼びます。この分担義務は、下記のような状態でも適用されます。
- 夫婦の一方が出ていき別居状態にある
- 同居状態にあるが、婚姻生活が破たんしている
つまり、法律上夫婦である限り、夫婦は「婚姻費用の分担義務」を負わなければなりません。そして分担の結果、夫婦は同レベルの生活を送る必要があります。
■婚姻費用分担請求について
別居中の夫婦であっても婚姻費用を分担する義務があることは説明済みです。しかし、夫婦の関係によっては、一方が分担義務を果たさない可能性もあります。
そこで、相手方に分担義務を果たさせる方法として「婚姻費用分担請求」があります。
請求できる対象者
婚姻費用分担請求は、「離婚前の夫婦」であれば基本的には請求可能です。具体的には下記のような人が当てはまります。
- 配偶者よりも収入が少ない人
- 別居後に生活費を一切受け取っていない人
- 未成熟な子供を育てている人
現在の日本社会では共働きもありますが、未だに「夫」の方が家計を支えている家庭が多いです。したがって、分担請求をするのは「妻」であるケースが多くなっています。
婚姻費用の金額
婚姻費用の金額は、一般的に5万円~15万円程度が相場になっています。ただし、これらは下記の事情などに従って上下します。
- 婚姻関係が破たんした責任割合
- 当事者、配偶者の収入具合
- 子供の有無、養育費用
なお、婚姻費用は夫婦間で自由に取り決めることが可能です。しかし、夫婦間で話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所が「養育費・婚姻費用算定表」に従って決定する場合もあります。
婚姻費用を受け取れる期間
婚姻費用を受け取れる期間は、「請求開始から、離婚もしくは同居再開まで」になっています。つまり、裏を返すと請求前の婚姻費用は請求できにくいことを意味します。
また、婚姻費用は夫婦である場合に発生する費用です。したがって、離婚が成立すれば婚姻費用を受け取れなくなります。
■婚姻費用分担請求の手続き
婚姻費用分担請求の手続き方法には4つの種類があります。手続きの流れを説明するので、違いをよく確認してください。
話し合いによる手続き
第1に、夫婦での話し合い(協議)によって分担請求ができます。婚姻費用は自由に決定できる内容なので、夫婦の間で納得のいく金額を決めるといいでしょう。なお、無事に話し合いがまとまれば、決定事項を証明できる書類を作成しておくことが肝心です。
調停による手続き
多くの夫婦は、話し合いで婚姻費用がまとまることはありません。そこで家庭裁判所に調停の申立てをします。
家庭裁判所に申立てすると、調停委員が仲介に入り婚姻費用を決めていきます。数回の調停を経て無事合意に至れば、合意内容に従い「調停調書」を作成します。調書には法的拘束力があり、内容に違反すると罰則を受けることになります。
審判による手続き
調停が不成立になった場合は、審判の申し立てをします。審判では家事審判官が、夫婦の資料をもとに総合的に判断し婚姻費用を決定します。
婚姻費用を決めるうえで考慮される内容は、夫婦の収入や、子どもの人数・年齢などです。また家庭裁判所には「養育費・婚姻費用算定表」と呼ばれる目安金額が用意されており、これに基づいて決定されます。
訴訟による手続き
調停や審判によっても婚姻費用がまとまらなければ、訴訟(離婚裁判)により請求するしかありません。訴訟まで発展することは珍しいですが、万が一の際には弁護士に依頼して権利を主張できるようにしましょう。
なお、訴訟に発展すると、婚姻費用の確定までに多大な労力と時間を割くことになります。しかし訴訟によって婚姻費用が確定すれば、配偶者は必ず決定事項に従わなければなりません。
もし決定事項に従わない場合は、強制執行などを行うこともできます。
■請求が認められない場合
夫婦は互いに婚姻費用分担義務を負う必要があります。そのため、いずれかが分担義務を怠ったら「分担請求」を求められます。しかし、場合によっては請求できない可能性もあります。例を挙げると下記のようなケースです。
- 請求者に別居の事由がある
- 請求者が扶助を受けないですむ事由がある
仮に分担請求をしても、請求者に問題がある場合は「権利の濫用」とみられます。この場合は請求をしても権利を認められません。
■まとめ:婚姻費用でトラブルをお抱えの方は弁護士にご相談を
婚姻費用分担請求について見てきましたがいかがでしょうか。この請求は「別居期間」もしくは「生活費を受取れていない期間」に利用できる制度です。この制度によって、収入が少ない配偶者も生活・養育ができるようになります。万が一分からないことがあれば、離婚問題に詳しい弁護士等に相談するといいでしょう。
埼玉県越谷市にある当エクレシア法律事務所は離婚問題に強い弁護士が複数人在籍している法律事務所です。離婚相談や別居による生活費工面でお困りの方、婚姻費用分担請求をお考えの方をはじめ、お困りの方はお電話・メールにてご連絡ください。内容をお聞きした上で、必要に応じてご予約頂き、ご相談をお受けいたします。
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