目次
1 親権とは何か
親権とは、子どもを監護・教育(養育)する権利義務のことを言い、この親権を持つ者を親権者と言います。
親権は、子どもの身上監護(しんじょうかんご)と子どもの財産管理という2つの内容を含むもので、親権者は、子どもの身体面、精神面での成育を図るとともに、子どもの財産の管理を行うことになります。
子どもの両親が結婚している場合には、この親権は両親がともに有していますが、両親が離婚すると、両親のうちのいずれか一方のみが子どもの親権を持つことになります。
したがって、未成年の子どもがいる夫婦が離婚するに当たっては、必ず子どもの親権者をいずれにするかを決めなければなりません。実際の離婚届の用紙にも子どもの親権者を記載する欄があり、親権者を決めた上で離婚届を提出することになっています。
なお、親権と関連して、監護権や監護者という言葉が使われることがあります。
実際には、両親のうちの一方を親権者としてこの親権者が子どもの財産管理を行い、他方を監護者として監護者が子どもと同居して子どもの身上監護に当たるというような形で定められることもあります。
この監護権や監護者は、親権や親権者とはどのような違いがあるのでしょうか?
監護者は、その名のとおり子どもの身上監護に関する権限を持つ者です。監護者を定めた場合でも、子どもの財産管理に関しては親権者に権限があります。つまり、親権者と別に監護者を置くということは、親権の身上監護の側面と財産管理の側面とを分けた上でそれぞれに関する権限を別の者に持たせることになるものです。
現実には、親権に関する争いが深刻で、話し合いで親権者を決めることができない場合などに妥協的な方法として使われることが多くなっています。
参考:監護権について
2 親権者の責任
親「権」という言葉からすると、親権は子どもに対する権利のように思えますが、実際には、親権は権利だけではなく義務でもあります。
民法は、「親権を行う者は、『子の利益のために』子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と定めており、親権は子どもの利益のためのものであるという前提に立っています。そのことからすると、親権は親の権利であるだけでなく、親の子どもに対する責務でもあることになります。したがって、親権者になると、権利を持つだけでなく一定の責任も負うことになります。
そして、具体的には、親権者は子どもの監護・教育と財産管理について責任を負うことになります。なお、子どもが誤って第三者に損害を与えてしまった場合には、親権者がその損害を賠償する責任を負うことになります(民法714条)。
3 親権者決定の方法、基準
(1) 親権者を決定する方法
離婚の際に親権者を決める方法としては、まずは両親の話し合い(協議)によることになります。
しかし、子どもと離れ離れになりたくない気持ちは両親のいずれも持っていることが多いため、どちらも譲歩せず、話し合いをしても親権者が決まらないことがあります。
その場合には、家庭裁判所で調停を行い、調停における話し合いで親権者を決めることになります。そして、調停でも親権者を決めることができない場合には、家庭裁判所が審判により親権者を決めることになります。
なお、離婚自体について訴訟になっており、その訴訟で親権者の決定も求めている場合には、審判ではなく家庭裁判所の判決によって親権者が決まります。
(2) 親権者決定の基準
親権者として両親のいずれがふさわしいかは、基本的には子どもの福祉の観点から判断されることになります。
具体的には、次のような要素を総合的に考慮して決定されることになります。
- 職業、勤務時間など親の就労の状況
- 収入、負債の有無など親の経済的事情
- 親や子どもの健康状態や性格、子どもの年齢・発育状況など、親や子どもの心身の状況
- 養育に対する協力者・補助者の有無
- 養育の方針、監護の環境、面接交渉への意向など子どもの監護全体に関する方針
- 過去及び現在の子どもの監護に関する事情
なお、親権者の争いでは父親よりも母親の方が有利であるということがよく言われます。確かに、未成熟の子どもには父親よりも母親が必要であるとの考え方もあり(母性優先の原則)、そのような考えに基づく裁判所の判断も多いことは事実です。
しかし、最近では必ずしもこのような考え方にこだわらず、先に挙げた諸事情を総合的に考慮していずれが親権者にふさわしいかが客観的に判断されることも多くなってきています。以前ほどには母性優先の原則が重視されなくなってきているということができるでしょう。
4 親権者変更の手続
いったん決まった親権者を変更するにはどのような手続を取ることになるのでしょうか?
親権者を後で他方の親に変更することも可能です。子どもの監護状況から親権者が子どもの福祉のために適当ではないことがわかったり、両親や子ども自身の事情が親権者を決めた当時と変わったりした場合などに、子どもの利益のために親権者を変える必要があるためです。
その場合には、家庭裁判所の調停・審判の手続によって親権者を変更することになります。はじめに親権者を決める場合と異なり、両親の協議で親権者を変更することはできません。
ただ、一度決まった親権者を変更することは、子どもにとって重大な変化をもたらすことになります。現在の親権者の下でいったん形成された生活環境をリセットし、新たに環境を作り直すことになるわけですから、このような環境の変化が子どもに悪影響を与える可能性もあります。
したがって、親権者の変更には、高度の変更の必要性が求められますので、簡単に認められるものではないことに注意する必要があります。
5 親権と苗字の関係
離婚すると夫婦の戸籍は別々になりますが、子どもの戸籍はそのまま結婚中の戸籍(戸籍の筆頭者の戸籍)に残り、子どもの苗字は離婚によっても変わりません。このことは、両親のいずれを親権者と定めても変わりません。例えば、結婚時に妻が夫の苗字に変えた場合には、離婚時に妻が子どもの親権者となっても、子どもの苗字は夫と同じもののままです。
この場合、子どもの苗字を親権者である母親と同じ苗字にしたいときは、2つの方法があります。
1つは、離婚時に母親が旧姓に戻る選択をした上で、家庭裁判所に子の氏の変更許可の申立をして許可をもらい、その後役所で入籍届をする方法です。
2つ目は、母親が離婚後旧姓に戻らない方法です。ただ、その場合には、母親と子どもとは違う戸籍に入ったままになります。子どもを母親の戸籍に入籍させるには、1つ目の方法と同様に、家庭裁判所に子の氏の変更許可の申立をして許可をもらい、その後役所で入籍届をする必要があります。
いずれの場合も、親権者である母親の苗字に変更する場合には申立は通常許可されますし、費用面でも印紙代800円と若干の切手代程度の負担で済みますので、さほど大変な手続ではありません。
6 親権と養育費
養育費とは、子どもの監護養育に必要な費用のことを言います。
離婚したとはいっても、親権者はもちろん、親権者を失った親も子どもにとって親であることは変わりません。親である以上は、子どもに対して扶養義務を負っていますので、離婚後も子どもの監護養育に掛かる費用を負担する義務があります。
離婚のときに定める養育費は、子どもの監護養育に掛かる費用を両親が分担して負担する目的で、一方から他方に支払われるものです。
では、この養育費の相場や計算方法はあるのでしょうか?
養育費の算定については、両親それぞれの年収、子どもの人数・年齢に基づいてこれを算定するのが通常です。
これらを当てはめると養育費のおおよその金額がわかる算定表があり、家庭裁判所でもこの算定表に基づいて養育費を算定していますので、参考にしてみて下さい。
参考:養育費の算定
7 養育費の増額・減額の方法
いったん決めた養育費を後で増額したり減額したりすることはできるのでしょうか?
養育費の支払義務を負っている人が、リストラで職を失ったり、病気で働けなくなるなどして収入がなくなってしまったり、大きく収入を減らしてしまったりした場合に、決められた養育費を支払えなくなることがあります。
また、子どもが病気になり定期的に医療費を負担しなければならなくなるなどして、決められた養育費では不足する場合もあり得ます。
このような場合に、いったん決めた養育費の増減額を求めることができます。
その場合、家庭裁判所で調停・審判の手続を行うことになりますが、親権者の変更の場合と同様に、それなりの事情がないと変更は認められませんので注意して下さい。
8 まとめ:親権問題・養育費問題は弁護士にご相談を
親権の争い、親権者や養育費の変更については、ケースによって事情が大きく異なるため、一般的な基準を示すのが大変難しい分野です。これらの問題について疑問を感じた場合には、専門家である弁護士に相談し、適切なアドバイスを受けた上で判断することが重要です。しかも、離婚に強い弁護士に相談をすることが大切です。
当エクレシア法律事務所は離婚についても実績が多数あり、20年以上の実績を持つ法律事務所です。埼玉県越谷市の南越谷・新越谷駅から徒歩3分のところにあるため、アクセスも非常によく、完全個室でご相談を承っております。
初めて離婚について弁護士相談をご検討の方は、こちらの初めて離婚相談される方へをご参照ください。
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