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一度決めた養育費の増額請求は可能?養育費増額調停など

養育費増額請求のイメージ

離婚の際にいったん養育費の金額を決めたものの、その後病気になったりリストラに遭ったりなどして収入が減って生活が苦しくなった場合、養育費の金額を増額するよう求めることはできるのでしょうか。
一度決めたものを変更するのは難しいような気もしますが、生活が苦しくては子どもの養育にも差支えるので変更を認めてもいいような気もします。そこで以下に、養育費の増額請求についてまとめてみます。

 

■1 養育費の増額請求

そもそも、一度決めた養育費を増額するよう請求することは認められるのでしょうか。

 

結論からいうと、認められる場合もあります。ただし、単に生活費が足りないからとか、子どもにもっといい生活をさせたいからというような理由では認められません。認められるのは、初めに「養育費を決めたときには予測できなかった事情の変更」があった場合です。

 

一度養育費の額を合意で定めればその合意には法的な拘束力があり、一方の当事者側の事情で増減を認めることはできないのが原則ですが、合意の前提になっていた事情自体に変化があった場合には、合意の変更が認められます(これを「事情変更の原則」といいます)。

 

養育費を定めるに当たっては、親双方の収入の金額や生活状況などを前提として養育費の金額を定めていますから、これらの前提事情に変更があった場合には、金額の変更が認められるわけです。

 

例えば、子どもが病気になり相当の医療費がかかるようになった場合や、リストラや病気などによる失業によって養育する親の収入が減った場合などがこれにあたりますし、子どもの進学により教育費が増加した場合もこれに当たることもあります。また、養育費の支払義務を負う側の親の収入が著しく増えた場合などにも増額が認められることがあります。

 

なお、養育費の支払義務を負う側の親の収入からして増額分を支払える見込みがない場合には増額は認められません。あくまで、支払義務者の収入に応じた金額の範囲内でのみ増額は認められます。

 

逆に、このような事情の変更が支払義務者側に生じた場合(例えば、失業により収入がなくなって合意した養育費が支払えなくなった場合)には、養育費の減額の請求が認められる場合もあることに注意しなければなりません。

 

ただし、養育費の支払義務から逃れるためにわざと勤務先を退職して無収入になったような場合には減額は認められないとする審判例があります。

 

■2 増額請求の手続

では、養育費の増額の請求をする場合には、どのような手続を取ればよいのでしょうか。

(1) 当事者間の話し合い

まずは、親双方の当事者間で増額に関する話し合いをすることになります。この話し合いで合意ができれば、以後増額した養育費を支払ってもらうことになります。なお、この場合、必ず合意内容を書面にするようにしましょう。また、この場合の書面は公正証書で作成しておくのが理想です。公正証書で作成しておけば、後で合意内容どおりの支払いが行われない場合に、すぐに強制執行の手続を取って支払いを確保することができます。

 

ただ、養育費の増額については実際には当事者間の話し合いでの解決は難しいかもしれません。いったん合意ができている養育費の金額について一方の事情で増やそうとするものですから、支払義務者側は簡単には応じないでしょう。

 

増額に応じてもらえない場合には、次の段階へ進むことになります。

 

(2) 養育費増額調停

当事者で話し合いを行っても合意できない場合には、増額を求める側が相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に養育費の増額を請求する調停を申し立てることになります。なお、もともとの養育費の定めを調停で行っている場合には、話し合いでなくこの調停の手続を取るのが無難でしょう。

 

この調停手続は、離婚調停や養育費を定める調停と同様の手続で進んで行くことになります。具体的には、調停委員が当事者双方から事情や意見を聴きながら話し合いを進めて行き、最終的に合意に達しようとするものです。

 

養育費の増額を求める調停では、「事情の変更」があったのか、あったとすればそれはどの程度のものなのか、増額を認めるとして幾ら認めるかなどが主に話し合われることになります。

 

その結果、合意に達すれば調停が成立して調停調書が作成され、以後は調停調書に定められた内容で養育費の支払が行われます。

 

(3) 養育費増額審判

調停で話し合いを行っても合意に達しない場合には、審判手続により家庭裁判所が増額の当否を判断します。審判手続は、調停とは異なり、家庭裁判所が「審判」と呼ばれる決定により争いに決着をつけます。つまり、この場合の「審判」は、判決と同様のものです

 

この審判により家庭裁判所が増額を妥当であると認めた場合には、支払義務者は以後増額された養育費を支払うことになります。

 

■3 養育費増額請求をする際に注意すべき点

以上に説明したとおり、養育費の増額が認められるかどうかは、事情の変更があったといえるか否かにかかっています。しかも、増額の請求は、一度決めたことについて後からこれを変更しようとするものですから、簡単に認められるものではありません。

 

したがって、変更があった事情については、証拠を前提として適切な主張を行う必要があります。その意味では、養育費増額請求については、調停の段階から弁護士に依頼して慎重に手続を進める必要があるといえるでしょう。

 

■埼玉県東部地域の方で養育費増額調停をお考えの方へ

適切な養育費を主張して求めることは、その子供が生活し、成長していくために必要なことです。しかし、何らかの事情の変更に伴い、養育費の増額が必要となるケースもあります。

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