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『熟年離婚』とは?離婚手続きと4つの注意点(入門編)

熟年離婚と亀裂のイメージ

■熟年離婚とは?

熟年離婚「長い婚姻生活の末に、離婚をする」ことを言います。一般的な解釈では、20年以上の婚姻生活とされています。したがって、世間で言われる「熟年(=50歳ごろ)」の人が離婚するからといって、婚姻生活が短い場合には熟年離婚の定義に該当しません。

 

ここ数年間で、日本での熟年離婚成立件数が増えてきています。熟年離婚は夫婦間の価値観の違いや、性格の不一致などの原因によって起きており財産分与などの問題も発生しやすいです。そのため、熟年離婚をする場合は、しっかりとした手続きを踏む必要があるでしょう。

 

ここでは熟年離婚の基本について説明しつつ、離婚の手続きや財産分与の注意点を解説していきます。もし熟年離婚を検討しているのであれば、一度確認をしてください。

 

熟年離婚の成立件数

熟年離婚は1990年代後半に、中高年夫婦の離婚が増えはじめたことをキッカケに言われる機会が増えました。その後、最近では毎年、4万件ほどの熟年離婚が成立しています。なお、熟年離婚の成立件数は、全離婚件数のうち15%~16%程度になっています。約6分の1に相当します。

 

熟年離婚の理由・原因

熟年離婚は「妻」から切りだされることが多いようです。そして離婚を切り出す理由としては、下記のようなことが挙げられます。

 

  • 夫婦間の価値観のズレ
  • 夫婦間の性格の不一致
  • 舅、姑の介護問題
  • 夫婦いずれかによる肉体的・精神的暴力(DV)
  • 夫婦いずれかによる異性問題

 

離婚の理由は、DVや異性問題など具体的なものもあります。しかし、熟年離婚の場合は価値観・性格のズレなど、一見すると離婚の理由に該当しないようなものもあるようです。

 

熟年離婚の時期

熟年離婚の時期は「夫」の退職後が多いようです。退職後である理由は、夫婦の資産、年金を分割することができるからです。したがって、夫婦いずれかに不満があれば、このタイミングが経済的に負担の少ない時期になるのです。

 

また、退職後である理由は、子供がある程度成長していることも考えられます。つまり、夫婦が一緒にいて子供の養育をする必要性が低いと考えるためでしょう。その結果、熟年離婚の時期が夫の退職後になるケースが多いのです。

 

■熟年離婚の手続き

実際に熟年離婚の手続きについて見ていきます。熟年離婚は「相手方からの反対」により、長引く傾向にあります。したがって、法的手続きをとる場合も多いです。そこで熟年離婚の手続きである「協議」「調停」「裁判」の3つを見ていきます。

 

協議による手続き

離婚を希望する者から、相手方に対して離婚について切り出します。一般的には直接「面会」して、離婚を切り出すことになるでしょう。しかし、別居しており夫婦関係が成立していない場合には、「書面」による切り出しが行われます。

 

そして、まずは話し合いによって離婚の成立を目指します。もし、夫婦間で話し合いがまとまった場合は、「離婚協議書」を作成しましょう。これによって協議後から離婚時までに気持ちが変わっても、離婚を成立させることができます。

 

調停による手続き

当事者間の話し合いだけではまとまらない場合、調停手続きによって離婚の成立を目指します。調停とは家庭裁判所に申立てをし、当事者の間に調停委員が入り、話をまとめることです。

 

実際の申立方法は、家庭裁判所にで「申立書」を作成しそれを提出します。その後、1カ月程度で、家庭裁判所より呼び出しがされ、話し合いを進めます。これを半年程度、数回繰り返したのちに成立、不成立などの終了が下されます。

 

なお、場合によっては調停委員より「復縁案」が提出され、それに同意することもあります。したがって、必ずしも調停は離婚を成立させるためだけのものではありません

 

裁判により手続き

調停手続きでも話の折り合いがつかなければ、離婚裁判をする必要があります。なお、離婚裁判では、離婚の事由が必要になります。離婚の事由としては下記のようなものがあります。

 

  • 不貞行為や悪意の遺棄
  • 3年以上の生死不明
  • 回復の見込みがない精神病
  • 婚姻の継続をしがたい事由

 

熟年離婚の場合は、「婚姻の継続をしがたい事由」を理由に離婚裁判をします。具体的には、まず地方裁判所へ訴訟提起をします。この提訴の際に、訴状を作成・提出する必要があります。

 

そして期間を経たのちに、裁判所から呼び出されます。その後は離婚の主張、もしくは和解の主張をしながら、法廷にて判決が下されますのでその結果に従います。

 

なお、熟年離婚が裁判まで長引くと、法律面の専門的な知識も必要になります。特に裁判まで想定する場合には、早めに弁護士に依頼をしてサポートしてもらうのが良いでしょう。

 

■熟年離婚をする際の4つの注意点

熟年離婚をするのであれば、離婚後の生活を維持するためにも気をつけなければならないことがあります。ここでは熟年離婚をする上で注意すべき4つのポイントを解説します。

 

財産分与はどうするのか?

財産分与とは、離婚する上で夫婦の共有財産を分け合う手続きのことを言います。離婚後の生活を安定させるためにも重要な検討事項です。

 

とりわけ、熟年離婚でトラブルになりやすい事項が「退職金の扱い」です。基本的には退職金も財産分与の対象です。したがって、離婚時には退職金も含めて協議をすべきです。

 

また、財産分与をする上で、もう1つ注意すべき点が「負債の扱い」です。この負債も財産分与の対象になっています。したがって、共有の負債なのか、それとも一方の負債なのかを明確にして分与する必要があります。

 

離婚時の財産分与に関しては、こちらに詳しく書いています。ご参考ください。

 

年金分割をどうするのか?

年金分割とは年金受給権を持つ配偶者から、離婚後に一定の金額の年金を受け取れる制度のことです。この制度によって収入がない配偶者も、熟年離婚後の生活に困窮しないで済むようになっています。

 

なお、受取れる年金は最大で半分まで受取ることが可能です。

 

ただし、年金分割には勘違いしがちな点が多数ありますので、一つひとつきちんとおさえておく必要があります。

 

「最大で半分」と書きましたが、これは夫婦の対象となる年金額の差額の半分です。もし妻の年金額が多ければ、その差額の最大半分を、夫に分与する形になります。必ずしも財産が多い方から分与されるとは限らないため、注意が必要です。

 

更に、対象となる年金は「厚生年金」や「共済年金」に限られます(共済年金は職域加算部分含む)。したがって、配偶者が「国民年金」のみに加入している経営者、自営業者の場合や専業主婦(夫)の場合には、年金分は受取れませんので注意が必要です。

もちろん婚姻前の期間の分の年金は分与されませんし、また受給資格があり、かつ受給開始年齢に達してからでないと、年金は受け取れません。

 

年金分割は離婚した翌日から2年以内に年金事務所に請求をしなければなりません。請求しなければ離婚届だけでは分与されませんので、こちらも忘れずに請求する必要があります。

離婚時には年金分割についてもしっかり取り決めておくようにしましょう。離婚に強い弁護士に相談する際に、アドバイスをもらうことも可能です。

 

その他の離婚における年金分割については、こちらにも記載していますので、ご参考ください。

 

慰謝料をどうするのか?

慰謝料とは肉体的・精神的な苦痛を受けた場合に受け取る損害賠償のことです。離婚の事由によっては慰謝料を受け取ることも可能になります。例えば、下記のような事由です。

 

  • 配偶者の浮気、不倫などの不貞行為
  • 配偶者による肉体的、精神的な暴力(DV)

 

「性格の不一致」や「価値観のズレ」などの事由では慰謝料を受取ることは難しいです。しかし、肉体的もしくは精神的な苦痛を立証できる場合には、慰謝料を受け取れる可能性があります。

 

離婚時の慰謝料請求については、こちらで詳しく書いていますので、ご参考ください。

 

親権をどうするのか?

親権とは子供を育てたり、子供の財産を守ったりする権利義務のことを言います。熟年離婚の場合は、子供がいても既に成人しているケースが多いです。したがって、離婚時の検討事項になることは少ないでしょう。

 

しかし、夫婦によっては未成年の子供を育てている場合もあります。こうした場合には「子供のため」になるように親権をきめる必要があります

 

また、親権の取り決めでは「養育費の扱い」も問題になりがちです。子供の年齢や生活事情によって受取れる養育費も変わるため、離婚時には取り決めておきましょう。

 

 

■まとめ:熟年離婚のご相談は弁護士にご依頼を

熟年離婚の基本、手続き、注意点と見てきましたがいかがでしょうか。価値観の多様化によって、熟年離婚の件数も増えています。もし何らかの事情で熟年離婚を検討しているのであれば、手続きや注意点についてしっかりと確認してください。また、分からないことがあれば、熟年離婚にも強い弁護士に相談してみるといいでしょう。

 

当法律事務所では、離婚問題解決に強い弁護士が複数人在籍しており、相談実績も豊富です。埼玉県越谷市にあり、越谷市だけでなく、周辺エリアの春日部市や草加市をはじめ、川口市、吉川市、三郷市、八潮市、東京都足立区などからもお問い合わせをいただいております。
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